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岩田裕子 子育て待合室

   2018年

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2018年3月
離乳食、悩んでいませんか?
これは、2018年3月に岩田こどもクリニックの待合室内に掲示されたエッセイです。

 生まれたての赤ちゃんは、母乳やミルクをたっぷり飲むのが仕事のようなもの。
昼も夜も、せっせと授乳してあげているとぐんぐん大きく育っていきます。
やがて満5か月くらいになると、そろそろ離乳食のことを考え始めますね。
1回食からスタートして、赤ちゃんが喜んで食べてくれるとママも張り切ってどんどん進めたくなってしまうことでしょう。ところがところが・・・・。
離乳食って、じつはとてもトリッキーな面があり、なかなかうまくいかない場合も多いようです。
ママが一生懸命に頑張っても、それが赤ちゃんにはうまく作用してくれないことがあります。
赤ちゃんがモリモリ食べれば食べるほど、逆に体重が増えなくなってしまうケースも、健診の場面でよく見かけます。離乳食をどんどん進めることで、なんと悪循環にはまってしまうこともアリ、なので注意が必要です。
なぜでしょう?
そもそも、離乳食って、なぜあるのでしょうか。

生まれたての赤ちゃんには歯が生えていません。だから、母乳を吸ったり哺乳ビンのミルクを吸ったりして栄養を取ることしかできません。流動食や固形食などは誤飲もしやすく、この時期の赤ちゃんには適しません。
歯が生え始めるのは、多少の個人差はありますが、だいたいは生後6か月頃からです。しだいに本数が増え、かみ合わせが増え、唾液も増えてきて、固形食をかみ砕いて飲み込むのに都合がよくなってきます。
離乳食というのは、この「歯が生え始めて、生えそろうまで」の間、さまざまな味を体験しながらよくかんで飲み込む練習をするものなのです。
離乳食だけでは栄養が不足するため、母乳やミルクを併用しますが、肝心なのは、そのバランスです。

まだ、うまくかめない、飲み込めない、という時期に、母乳やミルクより固さのあるものをたくさん与えても、赤ちゃんの栄養にはなりにくいでしょう。食べたものが腸から吸収されることなく、便の中にそのままの形で出てきてしまうことも時々あります。
逆に、トロトロの水っぽい食事を1日に2回も3回も与えておなかを満たしてあげても、やはり充分に赤ちゃんの身につく栄養にはならず、たんなる一時的な空腹しのぎになってしまいます。それと同じ分量だけ、母乳やミルクの摂取量が減ることになるので、結果的には栄養低下につながります。
これでは赤ちゃんが離乳食でダイエットしているようなものですね。離乳食より栄養価の高い母乳やミルクが不足しないようにしてあげたいものです。
大切なのは、赤ちゃんの今の状態に見合った量と質の離乳食を与える、ということ。
何か月だからコレ、何か月になったらアレ、というようなマニュアルに沿って決められるものではありません。一人ひとりの赤ちゃんによって、進め方は違ってきます。
離乳食、必ずしも早いのがいいわけではありません。赤ちゃんの状態をよく見ながら急がずにゆっくり進めてみてはいかがでしょう。