岩田裕子子育て待合室

前院長子育て応援エッセイ集

岩田こどもクリニックの待合室には、テレビがありません。週刊誌のような雑誌も漫画本もありません。診察の順番を待っているあいだ、こどもたちは床いっぱいにプラスチックブロックを広げて、思い思いの形を作って遊んでいる姿が見られます。比較的元気なこどもたちの多い午後などは、まるで幼稚園が引っ越してきたような大騒ぎ状態になってしまうこともあります。
　窓際にならんだ黄色いソファーでは、お話を読み聞かせてくれるお母さんのとなりで、小さな子が食い入るようなまなざしで、絵本の世界に遊んでいます。ふんわりとしたおだやかな時間が、そこでは流れているようです。ときどき、よその子ものぞきにきて、そのまま読み聞かせを聞きながら一緒に絵本の中の世界へ・・・・。
子育ては、こどもをすぐ近くであたたかく見守りながら、大きく育っていくのをじっくりと待つようなもの。
自分の子もよその子も、親同士さえも、お互いに育ちあうのを待ち合うもの。
子育て応援エッセイ集のタイトルには、そんな想いを託して、「子育て待合室」と名前をつけました。

こうして、診察室の中で座ったまま診察を続ける小児科医の私から、待合室で待っていらっしゃる患者さんのご家族に向けて、毎月、メッセージを送る習慣が始まりました。
本書は1996年1月～2006年5月までのメッセージを、当時の思いや状況を残すため、極力筆を加えずにまとめました。
・・・10年の時の流れを感じていただければと思います。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　
（「この本を読んでくださるかたがたへ」より）
日本図書館協会選定図書　　　（文芸社）
診察室からお母さん、お父さんに贈る子育て応援エッセイ集。

岩田裕子子育て待合室