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岩田裕子 子育て待合室

2014年

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2014年12月
開業20周年
これは、2014年12月に岩田こどもクリニックの待合室内に掲示されたエッセイです。

この12月で、岩田こどもクリニックは満20歳を迎えました。
 オープンして直後の翌年1月に阪神大震災、続いて地下鉄サリン事件と、直接の被害に遭うことはなかったものの、不安と恐怖で心が寒々としたことを思い出します。
あれから20年。
毎朝、お弁当を持ってそれぞれ中学、高校に通っていた二人の息子たちは、もうとっくに社会人になりました。親の老後に向き合い、また、親を見送るということも経験しました。過ぎてみれば早いようでも、それは様々な日常を刻みながらの、十分すぎるほどの長い時間でした。
7年目くらいに、病児保育室うさぎのあなを併設し、働く母親たちの先輩としてお役に立てるように模索してきました。さらに、ちょうどその頃から10年間ほどは、国民健康保険審査委員、千葉市小児科医会会長、千葉市医師会公衆衛生担当理事などの職を歴任し、誠に光栄なことではあるものの、自分のクリニックの仕事以上の負担と責任がふりかかってきて、多忙を極めました。
いま、ようやく、それら公務の重責から解放されて、自分自身の仕事に集中できる環境を得ることができました。

 20年前に開設した当初は、この地区にまだ小児科専門医による診療所が少なかったためか、多くのこどもたちは内科や外科の先生に診てもらっていたようでした。つまり小児科は、世間一般ではオマケのような扱いだったのかもしれません。こどもクリニックは赤ちゃんが行くところ、と思われていたのか、「小学生でも診てもらえますか?」と聞かれたときには、唖然としました。
その頃に生まれた赤ちゃんは、もう成人式。
 
小児科専門医は、一般小児科学はもちろんのこと、小児発達学をも踏まえて、こどもの心と身体全体を診ながら、子の成長を見守っていく、というスタンスでこどもたちと日々、向き合っています。例えるならばそれは、すぐ近くに住んでいて、いつも気にしてくれている親戚のようなもの、でしょうか。そして、実際にそういう存在でありたいと思っています。
最近は、生まれてすぐの頃から、かかりつけとして通っていたこどもたちが、中学生、高校生、大学生、社会人になっていて、病気のときだけでなく予防接種などでも受診してくれています。成長するにしたがい、あまり病気をしなくなった大きなこどもたちと、久しぶりに会えるのは、本当に楽しいものです。立派に成長した彼らの笑顔がまぶしいこと。
ときには、家庭人となってパパ、あるいはママとして子を連れて、訪れてくれたりすることもあります。長く続けていればこその新たなる出会いに、いつも感激してしまいます。
 
こんなにも素晴らしい小児科医としての仕事をこれまでずっと支えてくださった多くの方々、仕事を続けることを可能にしてくれた家族、そして何よりも、私を信じてクリニックを訪れてくださっている患者さんのお父さん、お母さん方に心より感謝申し上げます。 
 こどもたちの笑顔を守るために、次の5年、10年に向けて、これからも誠心誠意、小児科医の仕事をしてまいります。